
タイトル:「
木洩れ陽のノスタルジーカ」
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STREGA評価:C+(S~E)
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批評空間投稿レビュー(ネタバレ有り)◆前書き心温まる良い作品でした。こういう系統の作品に最近触れていなかったこともあり結構新鮮にも感じたり。内容としては人間の機械の共存、交流を通したそこからの「心」の芽生えと結構ストレートで捻りのないものなんでですけど、その分メッセージ性が強く心に響き、素直に面白かったと胸を張れる、そんな作品でした。
話の軸になっているのは人間とヒューマノイド(メトセラ)の「心」の交流ですね。
逆にSFとしての面白さはそこまでではないように思います。作中用語も頻繁に登場して来ますがその設定を十二分に活かせたかと聞かれるとそうではない。シナリオを担当した嵩夜あや先生自身がクリア後に見れるスタッフコメントで本作を「ラノベ的なSF」と言っていますが、まさにこの表現がぴったり当てはまります。
そのため難解な語が飛び交う濃い物語だとか考察的な面白さを期待する人にとっては本作は物足りなく感じるかもしれません。
でも個人的にはそういうのは些細な点なんですよね。それ以上に本作の優しい雰囲気が魅力的で楽しんでプレイすることが出来ました。作中用語の説明過多で入り込み辛いと感じる人もいるかもしれませんが、それさえ除けばわりと万人にオススメできる作品になっていると思います。
なんか前書きで殆ど言いたいことを言ってしまった感じがありますが…以下細かい内容に関して軽く触れていきます。
※画像は立ち絵でのちょっとした台詞、或いは公式サイト(体験版)で閲覧できるものだけを選んだのでネタバレにはなっていないと思います。ただそれでも気になるという人は注意して下さい。
◆システム・演出
コンフィグ画面はこちら。必要最低限なものは揃っているという感じです。
スキップの速さも良好で、全体を通して快適にプレイすることができました。
演出面も必要十分と言った感じ。取り立てて褒める箇所はないけど不満に思う点もありませんでした。これは後で詳しく触れますが、作中用語の注釈はTIPSなどを設けてプレイ中にいつでも見返せるようにして欲しかったですね。
◆グラフィック・音楽原画担当はのり太先生と言うことで文句の付けようがありません。本作の売り出し文句として『おとボク』コンビの新作ということが強調されているし、実際そこに釣られて買う人が殆どかと思うので深く語る必要もないですよね。

かわいい!
BGM担当はElements Gardenということで全体的に高水準で隙がない印象。サントラが付いてきたので後でゆっくり聞こう。OP・ED曲、挿入歌共に本作の優しい雰囲気にぴったりの曲になっていました。こちらもボーカルコレクションが特典で付いてきたので後で聞こうかな。まだ封すら開けてないけど。
◆Hシーン・キャラクターHシーンは全部で15枠(実質12枠)となっています。
内訳は朗3枠、カヤ3枠、フロゥ3枠、一姫6枠(3枠)です。一姫だけ倍となっていますがこれは単に眼鏡の有無だけで内容は全くの同じなので実際は3枠と他のヒロインと同じになっています。
また3枠ありますがその中でも1つのシーンを分割して2枠取っているので厳密なシーン数は2枠ですね。Hシーンはあくまで想いの確認としての最低限の役割だけでそこまで力は入れていないかなという印象です。
当然ですがしねまのHシーンはなし。個人的にはお母さん攻略したかったなぁ…。久しぶりにまきいずみさんが演じるキャラではまったような気がする。
みんな可愛いので悩みどころですがヒロインの好きな順は、
フロゥ>朗>カヤ>一姫でしょうか。殆ど横ばいなのであえて優劣を付ける必要はなかったかも。
キャスト陣は見てもらえれば分かると思いますがサブキャラ含め非常に豪華です。
各ヒロインについても軽く感想を。
・フロゥ
フロゥはプレイして一番株が上がったヒロインでした。彼女はメトセラと呼ばれるアンドロイドなので他ヒロインとは違って論理的な思考と恋愛感情とのせめぎ合いや、シナリオのメインテーマである心・人間らしい感情の芽生えなど見所が沢山ありそこの変化が見ていて非常に可愛かったです。
物語の鍵となるしねまに一番親愛の情を抱いていたのも彼女なので個別シナリオも必然的により盛り上がりのある内容になっていました。
・朗
今流行り?の駄妹タイプの妹。こういうお兄ちゃんが好き過ぎて色々暴走したりやらかしちゃったりする妹は大好きです。義妹なので近親相姦が~という話にはならずそこは結構あっさり。朗はとにかく感情表現が豊かで、翔太との兄妹間のやり取りも見ていて面白く、そこが本作を最後まで楽しんでプレイできた大きな理由かなと思いました。良い妹です。
・カヤ
カヤは主人公との距離感が一番心地良いヒロインでした。この状態からの友情→恋愛への変化が初々しいもので見ていてニヤニヤしました。あとおっぱいが大きい。
個別ルートではしねまがそこまで絡んでこなかったためか謎の深いところまでは触れられず、結構あっさりしたものでしたが、タイトルにある"ノスタルジー"という想いが強く反映されていた内容になっていたと思います。
・一姫
一姫は語彙が豊富で会話のやり取りが見ていて一番面白かったです。『おとボク』でもそうでしたがこのライターは話の中にちょっとした薀蓄を混ぜてくるので、その持ち味が一番発揮されていたヒロインが一姫ではないかと思います。ロジカルな思考が中心で冷静さを失わない彼女ですが、個別ルート終盤では熱く語る場面もありそこは心に残る場面になりました。
内容とは全く関係ありませんが、某作品の影響で
一姫(いつき)CV.青山ゆかりというのには何か違和感がありました。(性格も結構似たタイプだし…)
振り返ってきて改めて思ったけどみんな可愛いし優劣は特に意味ないですね…。
あとキーパーソン(厳密には人じゃないですが)であるしねまに関しては批評空間のほうに色々書いたのでここでは割愛します。結構突っ込んだことも書いてますし。
◆シナリオ前書きでも書きましたが本作はSF物というよりも人間と機械の「心」の交流を通したハートウォーミングストーリーとしての一面が強いです。
どの個別ルートでも鍵になるのは自律思考を持たない旧世代機ヒューマノイド「しねま」とそれを創った「店長」の存在であり、謎が多い二人にそれぞれのヒロインの問題を絡ませながら迫る内容になっています。
攻略制限は特にありませんが個人的な話の盛り上がりとしてはフロゥ>一姫>朗>カヤの順。まあでも好きなヒロインからやっても全く問題ないです。
ヒロイン全員をクリアするとラストエピソードが開放され、ここで全ての謎が明らかになります。ここの締め方が良く、読後感は非常に爽やかなものでした。プレイ後にこういう心温まる気分になれる作品は貴重ですね。
舞台設定が2488年、人間とメトセラと呼ばれる自我を持った機械が共存している近未来ということで、作中用語も頻繁に登場してきますが(序盤は特に)、あくまでシナリオの根幹にあるのはそういう小難しい要素じゃなくて、人の想いだとか夢、郷愁という抽象的なものになっています。
※作中用語の例


そのため薀蓄はともかく作中設定はもっとシンプルに分かりやすくしても良かったんじゃないかなと思います。本作の魅力的な点はそこじゃないですし。説明は丁寧で好感が持てたのですが、人によっては説明過多で入り込みづらさを感じてしまう恐れがあるので、そこで折角のストレートに心に響く物語の良さが失われかねないのは単純に勿体無いと感じました。
体験版では説明が多くて何だか分かりづらいと感じた人でも、以降の内容は明快で心温まるものになっているので、是非とも敬遠せずにプレイしてみて欲しいです。
体験版を木洩れ陽のところまで収録していたら本作の魅力を十分に伝えられて良かったと思ったけどこれは全体のボリュームとの兼ね合い的に難しいかなぁ…。
◆総評心温まる物語に触れたいという人には自信を持ってオススメする作品です。
作中用語も説明が丁寧なので実はそこまで気にする必要はないかもしれません。テキストそのものの読みやすさもあり、個人的には分かり難さを感じることなく最後までプレイすることができましたし。
プレイ時間もそこまで長くないのでさくっとプレイして心地良い余韻に浸れるのではないでしょうか。
あとタイトル画面で"nkmr"と入力するとちょっとしたストーリーが楽しめます。これはクリア後にやったほうが良いかな?詳しくは実際にプレイしてのお楽しみ。